「九十八歳の妊娠」という本があります。
2001年に出版されました。
介護保険制度がはじまったのが2000年ですからそれ以前のことが書かれています。
全国に先駆けて福岡市にできた宅老所の話です。そこに九十八歳の認知症になられた女性の方がいらっしゃって、妊娠したという。話を聞くとどうやら時々やってくる研修医の若い男性にお腹をさすられたことで、便秘と重なり妊娠した、ということらしい。
この本の作者である谷川俊太郎さんのお母さんは、その宅老所にいらっしゃいました。お母さんの近くにいらっしゃる方を観察したのでしょう。谷川俊太郎さんは九十八歳の妊娠を目の当たりにして、認知症というのはなんて豊かな世界だろうと言いました。
人はみな生きていれば老います。その豊かな世界をしっかりと捉えて豊かに表現し、コミュニケーションできるように、私はなりたいです。
谷川俊太郎さんのご冥福をお祈りします。